今回のテーマは「フィードバック」です。
フィードバックとは?
フィードバックを理解するために、先ずは辞書の定義を確認してみましょう。
フィードバック
- 入力と出力のあるシステムで,出力に応じて入力を変化させること。電気回路に多く使われる。帰還。
- 心理学・教育学で,行動や反応を結果を参考に修正し,より適切なものにしていく仕組み。
- 結果を原因に反映させて自動的に調節していくこと。
三省堂提供「デイリー 新語辞典」より
通常、コミュニケーションスキルで「フィードバック」という場合は、2.の意味で使われます。
コーチングでは、「フィードバック」をこんな風に説明することもあります。
軍事訓練で、ある目標に地点に向けて大砲を発射していると想像してみて下さい。
大砲は、目標地点から離れた場所に落ちます。
「目標地点より、50m手前に落ちた」
「目標地点から、右に35mはなれた位置に落ちた」
というように、その着弾地点を砲手に知らせることで、大砲の位置を修正し目標に近づけていきます。このことを、軍事用語でフィードバックといいます。
フィードバックのポイントは、このように具体的に事実を伝えることです。
「惜しい!」とか、「ちょっと右に離れた」のように、曖昧な表現で伝えても適切に修正することはできません。具体的に伝えることで、目標地点に近づけていくことができるのです。
また、フィードバックをする人は、「大砲の向きをもっと右に」とか、「もっと上に向けて」といった指示はしません。大砲の向きをどのように調整するかは、砲手自身なのです。
指示命令ではなく、相手に考えさせ行動を選択させる。
これもフィードバックの大切なポイントです。
フィードバックのやり方
ここで問題です!
暗い印象の部下がいます。
お客様への影響もあるので、「もう少し明るくなって欲しい」と、あなたは思っています。この部下へは、どんなフィードバックが効果的だと思いますか?
(A)「お客さんと話しているとき、どうも印象が暗いね。」
(B)「お客さんと話しているとき、うつむいていることが多いね。」
いかがでしょうか。
(B)のフィードバックであれば、「あ、自分はうつむいていることが多いのだな」と、部下は気が付くことができます。
ついつい、私たちは(A)のような曖昧な伝え方をしてしまいがちです。フィードバックを伝えるときは、ぜひ、(B)のように具体的に伝えてみてください。
このように、フィードバックは「具体的な事実」を伝えることが大切です。スポーツ界やビジネス界で、育成が上手いといわれる人たちは、このフィードバックを実に上手く活用しています。
フィードバックを受ける
フィードバックを受ける場合は、心構えが必要です。
特に、ネガティブなフィードバックは、受け取りにくい傾向があります。
ネガティブフィードバックは、受けて気持ちの良いものでありません。けれど、自分では、気がついていない点に気づくことがができることは、とても有難い事だとも思うのです。
以前、私はコーチからこんなフィードバックを受けたことがあります。
それは、第1回目のコーチとのセッションでした。30分間話した後に、コーチからこう伝えられました。
「30分の間に、”できない”って、5回言いましたね。」
これを聞いて、びっくりしてしまいました。なぜなら、「できない」と、口にしているつもりが、全く無かったからです。正直、あまり良い気分ではありませんでした。
帰宅後、早速、家族にこの話を伝えました。すると、
「ああ、よく口にしているね。」
と、言われてしまったのです。こうなると、それを認めないわけにはいきません。
それから、「できない」という言葉を、意識して使わないことを心がけました。
それから1ヶ月後、コーチからこう言われました。
「できないと、言わなくなりましたね。」
あの時、コーチがフィードバックしてくれていなかったら、今でもその口癖は治っていなかったかもしれません。
具体的なフィードバックであったからこそ、改善もできたのだと思います。
クライアントにも、時々、部下からフィードバックをもらってくるよう課題を出すことがありますした。皆さん、最初は抵抗があるのですが、実際にフィードバックを受けてみると
「こんなふうに感じていたとは知りませんでした。」
「本音が聞けてよかった。」
と、なかなか好評です。
皆さんも機会があれば、自分からフィードバックを受けてみてはいかがでしょうか。
フィードバックを実践する
次のことを実践してみましょう!!
(1) 過去を振返って、自分にとって役立ったフィードバックを紙に書き出してみましょう。そして、なぜ、それがあなたにとって役立ったのか理由を考えてみて下さい。
振返ってみた結果はいかがだったでしょうか?
コーチにフィードバックされた話を書きましたが、もう1つ、私には忘れられないフィードバックがあります。
あれは、私が高校生の頃のことです。
我が家は駅から歩いて10分ちょっとの距離にありました。雨が降ったとき、帰りが遅くなったときなど、よく母が父を車で駅まで迎えにいっていました。
母が出かけるときに、玄関の鍵を閉めておくのは私の役割。
ある寒い日のこと、父から連絡があり、母が駅まで向かえに行くことになりました。いつものように、出かけていく母にこう声をかけました。
「いってらっしゃい。事故起こさないようにね。」
すると、母は振返りこう言いました。
「前から言おうと思っていたんだけれど、”事故起こさないで”って言われると、事故起こしちゃいけないって意識しすぎて不安になるから止めて欲しいの。」
母のこの言葉を聞いて、はっとさせられました。母を気遣うつもりが、逆に不安にさせていたとは、全く気がつかなかったのです。
母からフィードバックをされた後、私は、こう母に声をかけるようになりました。
「気をつけてね、いってらっしゃい。」と。
あなたの、記憶に残るフィードバック。
きっとそれらは、何らかの行動を変えるきっかけになっていたのではないでしょうか。
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